2016年10月11日

書籍: 人を動かす


 
大学院(MBA)の課題図書となっていた一冊。
 
Amazonでは「あらゆる自己啓発書の原点となった不朽の名著」と紹介されている。
誤解を招きそうな邦題が付けられているが、内容は誠実なものが中心。
 
--- 以下、個人的な所感 ---
 
MBA的な理論・論理も重要だが、それを実行するのは人間であり、
人間はどこまでいっても感情の動物である。結果が全てという人も
無自覚に感情に振り回されている。
 
大きな成功も、大きな失敗も、感情に振り回された人間の営みの中から生まれる。
そうであるならば、もっとも重要なことは、感情を上手く伝えあい、制御することである。
 
言葉は万能なようで、実はそうでもない。
伝えたいことがあっても、言葉にすると取りこぼしてしまう部分がある。
順番に伝えることしか出来ないため、早とちりされてしまうこともある。
誤解を生じることだってある。
  
だから、表情・言葉・行動は意識的に丁寧にしてゆかねばならない。
少し立ち止まってから行動すれば、多くの問題を防ぐことが出来る。
少し立ち止まってから行動すれば、幸せに、多くのことを成し遂げることが出来る。
 
posted by Takashi Inoue at 00:08| Comment(0) | 書籍

2016年02月15日

書籍: ほとんどの社員が17時に帰る 売上10年連続右肩上がりの会社



理想の働き方を目指して奮闘する社長の一冊

著者である社長の岩崎裕美子氏は、
広告代理店のプレイングマネージャ(激務)から、
未経験の化粧品業界に飛び込んで起業した経歴を持つ。

本書は「スピード仕事術」といった内容ではなく、
根本的なものが多いため学びは大きい。

 ・労働集約的にならないビジネスを開発するには
 ・労働時間を圧縮しつつ、持続的成長を保つには
 ・組織文化づくり、マネージメントのありかた
 ・女性のキャリアのありかた

さらに、上記を確立するまでに起こった様々なトラブル、
改善に向けた試行錯誤の過程なども記されているため、
机上の空論でないことも実感できる。

初めは残業なしで稼げるビジネスの模索から始まるが、
次第に組織作り、モチベーション喚起の方向に移ってゆく。
「17持あがりになった。給料も良い。なのになぜ精神不調の社員が出るのか、、、」
という暗黒時代からの奮闘劇には、一見以上の価値がある。


■感想

著者は「真剣に話を聞くこと」「考えていることを何度も伝えること」
の重要性を何度も強調していている。

日本人は「察すること」「察されること」が無意識に刷り込まれており、
それがトラブルの発生源となっているのではないかと感じた。
とはいえ、本人からすると「まさか伝わっていないとは」という内容も多いので、
第三者的な監査・コンサルを積極的に受け入れるという著者の行動は合理的だろう。

また、「伝える内容」と「伝え方」は重要な両輪であることにも留意したい。
目的は、伝えることではなく、理解し行動してもらうことなのだから。
 
タグ:MBA 組織作り
posted by Takashi Inoue at 19:46| Comment(0) | 書籍

2016年02月10日

書籍: システムインテグレーション再生の戦略



日本のSIerが、受託開発を脱してどこへ向かってゆくべきか。
その道標となり得る一冊。

豊富なデータと実例に支えられており、説得力が非常に高い。
現場の人々が、丁寧に議論を重ねて書いていることが感じられる。
経営者から営業・プログラマ・情シスの方まで参考になる内容のはずなので、
SI産業に携わる方々にぜひ読んで頂きたい。


■サマリ

・SIは成長産業ではない
 経済産業省によるデータを見ると、SI市場は右肩上がりになっている。
 しかしそれは、みずほ銀行やマイナンバーなどによる特需による効果。
 実質成長率は非常に低い。しかもこれは日本法人のみの統計である。

・世界のトレンドはクラウドサービス
 クラウドサービスの世界市場は年数10%の伸びを見せている。
 日本企業が特需案件をこなしているうちに、 
 外資系企業がその他の需要、今後の需要をクラウドで奪ってゆく。
 (特需対応による機会損失と技術停滞)

・ソフトウェア受託開発の闇
 工数積算で見積もるにも関わらず、
 成果保障(瑕疵担保責任)を負うという契約構造が不幸を呼んでいる。
 請負契約の場合、支払いを人質にして延々と作り直しを求められてしまう。
 すると、提供側は少しでも原価を抑えようという考えになり、
 品質保証もそこそこに、要件定義書通りに作ることに専念するようになる。
 顧客側も対抗して、何でも仕様に入れようとするようになる。
 そして互いの不信感が深まってゆく。

・SIは製品産業からサービス産業へ
 これまでのシステム開発は「業務効率化」を目的としていた。
 しかし現在は「競争優位性を生み出す仕組み」としてシステムが構築される。
 それによって、QCD(品質、コスト、納期)の優先順位も変化しており、
 クラウドサービスを利用する価値が上がってきている。
 しかしクラウドを使うと工数が減るため、人月積算では価格が落ちてしまう。
 また、少ない資本・工数・専門知識で構築出来るため、
 新規参入が容易になり、競争が激化してしまう。

・今後どうなってゆくか
 SI業界に現れた3つの大きなトレンドと、
 それを支える10のテクノロジーを紹介。
 
・ポストSIビジネスの戦略
 今後SI企業が取るべき3つの戦略と9つのシナリオを示し、
 それらを既に実現している先進的企業のインタビューを掲載。
 
・ポストSIビジネスに必要なもの
 マーケティング (製品産業ではなくサービス産業のため)
 グローバル戦略 (オフショアとの向き合い方)
 プライシング戦略 (工数積算に代わるもの)
 人材育成戦略 (エンジニアと営業の育て方)
 新規事業戦略 (検討すべき要素、実施手順)
 
・その他のキーワード
 - モノは無料で提供し、サービスで稼ぐ
 - 使用量課金であればビジネス中止にも舵を取りやすい
 - 業務のプロの話を聞きながら、その場で一緒に考えて実装
 - 自社開発システムを使ってサービス提供する (データ投入から)
 - 情報システム部門がITマネジメント(業務標準化等)の機能を持つべき
 - ソリューション営業(課題解決)からイノベーション営業(変革推進)へ
 - オフショアには、安価な労働力ではなく、優秀な労働力を求めるべき
 - 新規事業は現在の延長ではないので、現在の評価軸で評価しないこと
 
posted by Takashi Inoue at 02:35| Comment(0) | 書籍

2016年01月30日

書籍: 交渉の達人



ハーバード・ビジネススクールの
交渉術コースの内容をまとめた一冊

交渉の基本概念(BATNA、RV、ZOPA)から始まり、
最適解に向かう際に障害となりがちな心理的要素、
そして、それらの克服法が豊富な実例とともに紹介されている。

「自分に有利な条件で契約をまとめる方法」ではなく、
「お互いが満足する契約をまとめる方法」を追求しているため、
読んでいて非常に心地良く、適用へのモチベーションも高まる。

本書の内容は、MBAにおける講義だけでなく、
企業向け研修や、実業界との協業の中で検証され、
磨かれてきたものであるという。


■サマリ

交渉の基本
・準備する (自分の選択肢を整理する、相手の選択肢を想像する)
・情報格差を埋める (判断の根拠、回答内容の理由、参照点を問う)
・優先度の違いを利用する (互いの最優先を満たす解が存在する)
・不確定要素には条件付き契約 (ハッタリを防止)
・バイアスを解いて納得感を形成する

交渉のテクニック
・「…」 自分がボロを出しやすいのは、相手が沈黙している時。
・「他の引き合いもあります」 嘘にならないように、事前にBATNAを作っておく
・「資料がありません」 時間的プレッシャーが強い場で回答しない。
・「なぜでしょうか」 先入観の排除
・「休憩時間を取りましょう」互いのために検討時間を取る。

本書は内容が非常に多いため、簡潔にまとめることが難しい。
難しい交渉に直面した時に、本書をチェックリスト的に
読み返すのが良いかもしれない。


■目次

第一部 交渉のツールキット
01 交渉において価値を追求する
02 交渉において価値を創造する
03 調査交渉術

第二部 交渉の心理学
04 合理性が崩れる時 - 認知のバイアス
05 合理性が崩れる時 - 心理的バイアス
06 不合理の世界で合理的に交渉する

第三部 実社会での交渉
07 影響力の戦略
08 交渉の盲点
09 ウソとごまかしに対峙する
10 倫理的なジレンマを認識し、解決する
11 弱い立場からの交渉
12 交渉が荒れたとき - 不合理、不審、怒り、脅し、エゴに対処する
13 交渉してはならないとき
14 達人への道
 
タグ:MBA 交渉
posted by Takashi Inoue at 16:23| Comment(0) | 書籍

2016年01月15日

書籍: ソフトウェア企業の競争戦略


 
MITスローン経営大学院 マイケル・A・クスマノ 教授による
ソフトウェア企業の経営論。名著。
 
2004年の出版だが、いま読んでも得るものは非常に多い。
ソフトウェア企業は黎明期から同じような失敗を繰り返しており、
現在の日本でもそれは起こり続けている。本書に記載されている
先人の経験・ベストプラクティスに学ぶことは非常に重要だろう。
 
書籍の内容
・ソフトウェア産業とは (どのような性質のビジネスか)
・ソフトウェア企業の戦略 (何を考えれば良いか)
・ソフトウェア産業で成功するには (成功の要件)
・ソフトウェア開発論 (組織体制、開発モデル)
・ベンチャーキャピタルが見る部分 (良い計画の要件)
・スタートアップ10社のケース
 
開発の現場にいる人であれば、
第四章「開発のベスト・プラクティス」は必見。
マイクロソフトが作り上げた開発手法
「同期安定化プロセス」について紹介されている。
 
マイクロソフトは、過去 Word Ver1.0 の開発で大失敗している。
計画では開発期間は1年であったが、完成したのは5年後であった。
しかも毎年「今年中には終わるはず」と見込んでいた。
この失敗を徹底的に分析し「同期安定化プロセス」を
開発・導入することにすることで、Excelは予定通り1年で開発完了した。
 
ウォーターフォールモデルは、NASAのロケット打ち上げプロジェクト向けに
作られたモデルであり、超大規模のミッションクリティカルな案件に適している。
逆に言うと、一般のビジネス用途にはそぐわない、と述べている。
 
私自身、ソフトウェア関連業界に絶望感を覚えていたが、
この本を読んでまだまだ希望はあると感じた。
 
posted by Takashi Inoue at 04:00| Comment(0) | 書籍