2016年02月10日

書籍: システムインテグレーション再生の戦略



日本のSIerが、受託開発を脱してどこへ向かってゆくべきか。
その道標となり得る一冊。

豊富なデータと実例に支えられており、説得力が非常に高い。
現場の人々が、丁寧に議論を重ねて書いていることが感じられる。
経営者から営業・プログラマ・情シスの方まで参考になる内容のはずなので、
SI産業に携わる方々にぜひ読んで頂きたい。


■サマリ

・SIは成長産業ではない
 経済産業省によるデータを見ると、SI市場は右肩上がりになっている。
 しかしそれは、みずほ銀行やマイナンバーなどによる特需による効果。
 実質成長率は非常に低い。しかもこれは日本法人のみの統計である。

・世界のトレンドはクラウドサービス
 クラウドサービスの世界市場は年数10%の伸びを見せている。
 日本企業が特需案件をこなしているうちに、 
 外資系企業がその他の需要、今後の需要をクラウドで奪ってゆく。
 (特需対応による機会損失と技術停滞)

・ソフトウェア受託開発の闇
 工数積算で見積もるにも関わらず、
 成果保障(瑕疵担保責任)を負うという契約構造が不幸を呼んでいる。
 請負契約の場合、支払いを人質にして延々と作り直しを求められてしまう。
 すると、提供側は少しでも原価を抑えようという考えになり、
 品質保証もそこそこに、要件定義書通りに作ることに専念するようになる。
 顧客側も対抗して、何でも仕様に入れようとするようになる。
 そして互いの不信感が深まってゆく。

・SIは製品産業からサービス産業へ
 これまでのシステム開発は「業務効率化」を目的としていた。
 しかし現在は「競争優位性を生み出す仕組み」としてシステムが構築される。
 それによって、QCD(品質、コスト、納期)の優先順位も変化しており、
 クラウドサービスを利用する価値が上がってきている。
 しかしクラウドを使うと工数が減るため、人月積算では価格が落ちてしまう。
 また、少ない資本・工数・専門知識で構築出来るため、
 新規参入が容易になり、競争が激化してしまう。

・今後どうなってゆくか
 SI業界に現れた3つの大きなトレンドと、
 それを支える10のテクノロジーを紹介。
 
・ポストSIビジネスの戦略
 今後SI企業が取るべき3つの戦略と9つのシナリオを示し、
 それらを既に実現している先進的企業のインタビューを掲載。
 
・ポストSIビジネスに必要なもの
 マーケティング (製品産業ではなくサービス産業のため)
 グローバル戦略 (オフショアとの向き合い方)
 プライシング戦略 (工数積算に代わるもの)
 人材育成戦略 (エンジニアと営業の育て方)
 新規事業戦略 (検討すべき要素、実施手順)
 
・その他のキーワード
 - モノは無料で提供し、サービスで稼ぐ
 - 使用量課金であればビジネス中止にも舵を取りやすい
 - 業務のプロの話を聞きながら、その場で一緒に考えて実装
 - 自社開発システムを使ってサービス提供する (データ投入から)
 - 情報システム部門がITマネジメント(業務標準化等)の機能を持つべき
 - ソリューション営業(課題解決)からイノベーション営業(変革推進)へ
 - オフショアには、安価な労働力ではなく、優秀な労働力を求めるべき
 - 新規事業は現在の延長ではないので、現在の評価軸で評価しないこと
 
posted by Takashi Inoue at 02:35| Comment(0) | 書籍
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