2016年01月30日

書籍: 交渉の達人



ハーバード・ビジネススクールの
交渉術コースの内容をまとめた一冊

交渉の基本概念(BATNA、RV、ZOPA)から始まり、
最適解に向かう際に障害となりがちな心理的要素、
そして、それらの克服法が豊富な実例とともに紹介されている。

「自分に有利な条件で契約をまとめる方法」ではなく、
「お互いが満足する契約をまとめる方法」を追求しているため、
読んでいて非常に心地良く、適用へのモチベーションも高まる。

本書の内容は、MBAにおける講義だけでなく、
企業向け研修や、実業界との協業の中で検証され、
磨かれてきたものであるという。


■サマリ

交渉の基本
・準備する (自分の選択肢を整理する、相手の選択肢を想像する)
・情報格差を埋める (判断の根拠、回答内容の理由、参照点を問う)
・優先度の違いを利用する (互いの最優先を満たす解が存在する)
・不確定要素には条件付き契約 (ハッタリを防止)
・バイアスを解いて納得感を形成する

交渉のテクニック
・「…」 自分がボロを出しやすいのは、相手が沈黙している時。
・「他の引き合いもあります」 嘘にならないように、事前にBATNAを作っておく
・「資料がありません」 時間的プレッシャーが強い場で回答しない。
・「なぜでしょうか」 先入観の排除
・「休憩時間を取りましょう」互いのために検討時間を取る。

本書は内容が非常に多いため、簡潔にまとめることが難しい。
難しい交渉に直面した時に、本書をチェックリスト的に
読み返すのが良いかもしれない。


■目次

第一部 交渉のツールキット
01 交渉において価値を追求する
02 交渉において価値を創造する
03 調査交渉術

第二部 交渉の心理学
04 合理性が崩れる時 - 認知のバイアス
05 合理性が崩れる時 - 心理的バイアス
06 不合理の世界で合理的に交渉する

第三部 実社会での交渉
07 影響力の戦略
08 交渉の盲点
09 ウソとごまかしに対峙する
10 倫理的なジレンマを認識し、解決する
11 弱い立場からの交渉
12 交渉が荒れたとき - 不合理、不審、怒り、脅し、エゴに対処する
13 交渉してはならないとき
14 達人への道
 
タグ:MBA 交渉
posted by Takashi Inoue at 16:23| Comment(0) | 書籍

2016年01月15日

書籍: ソフトウェア企業の競争戦略


 
MITスローン経営大学院 マイケル・A・クスマノ 教授による
ソフトウェア企業の経営論。名著。
 
2004年の出版だが、いま読んでも得るものは非常に多い。
ソフトウェア企業は黎明期から同じような失敗を繰り返しており、
現在の日本でもそれは起こり続けている。本書に記載されている
先人の経験・ベストプラクティスに学ぶことは非常に重要だろう。
 
書籍の内容
・ソフトウェア産業とは (どのような性質のビジネスか)
・ソフトウェア企業の戦略 (何を考えれば良いか)
・ソフトウェア産業で成功するには (成功の要件)
・ソフトウェア開発論 (組織体制、開発モデル)
・ベンチャーキャピタルが見る部分 (良い計画の要件)
・スタートアップ10社のケース
 
開発の現場にいる人であれば、
第四章「開発のベスト・プラクティス」は必見。
マイクロソフトが作り上げた開発手法
「同期安定化プロセス」について紹介されている。
 
マイクロソフトは、過去 Word Ver1.0 の開発で大失敗している。
計画では開発期間は1年であったが、完成したのは5年後であった。
しかも毎年「今年中には終わるはず」と見込んでいた。
この失敗を徹底的に分析し「同期安定化プロセス」を
開発・導入することにすることで、Excelは予定通り1年で開発完了した。
 
ウォーターフォールモデルは、NASAのロケット打ち上げプロジェクト向けに
作られたモデルであり、超大規模のミッションクリティカルな案件に適している。
逆に言うと、一般のビジネス用途にはそぐわない、と述べている。
 
私自身、ソフトウェア関連業界に絶望感を覚えていたが、
この本を読んでまだまだ希望はあると感じた。
 
posted by Takashi Inoue at 04:00| Comment(0) | 書籍

2016年01月05日

書籍: 図解マーケティングの教科書



ITの発達に伴って、マーケティング業界には
多種多様な手段と概念が生まれてきている。
その最新事情を紹介しているのが本書である。


■内容

・キーワード解説
 DMP/SSP/DSP、ネイティブ広告、エンドレスアイル etc

・先進的企業のケース紹介
 JR東日本、リクルートジョブス、トヨタ、Z会 etc

・データ紹介
 テレビCMとアプリダウンロード数の相関 etc

・マーケターによる実践方法解説
 Fringe81 CEO 田中弦 氏


■感想

レイアウトが美しく、平易な言葉で
解説されているため読みやすい。
しかし深い内容までは解説されていない。

マーケティング専門外の人が、
最新事情をザッと把握するには良いのではないだろうか。
私にはとっては価値のある本だった。

移り変わりの激しい業界なので、
最新のトピックスを追うことも重要だが、
時系列的な変化を把握することで、
大局的な視点を得るのも重要だろう。
 
posted by Takashi Inoue at 02:16| Comment(0) | 書籍

2016年01月02日

書籍: 総合的戦略論ハンドブック



経営に限らず、広く戦略論を解説している一冊。

戦略論の歴史、過去の名著、基礎概念などを紹介した後、
軍事・金融・経営・安全保障などの分野での適用事例が紹介される。

「日本人は長期的な計画、戦略策定が不得意である」として
諸外国の識者からたびたび指摘されているにも関わらず、
日本でそういった内容を学ぶ書籍・学ぶ機会が極端に少ない
ことから、この本が作られることになった。


■感想

戦略論ハンドブックという名前ではあるが、
戦略論の詳細よりも、その発展の歴史(学派)や、
戦略策定の前提となる情報(宗教など)の紹介が多い。

何か特定の分野で戦略論を学んだ後で
この本に帰ってくると、より一般的に、包括的に
戦略論を捉えることが出来そうだ。

個人的には、ゲーム理論の概要、
古典的名著(孫子、トゥーキディディース、クラウセビッツ、マクナマラ)、
宗教リテラシー(ユダヤ教、キリスト教、イスラーム、ヒンドゥー教)
などの項で、初めて触れた情報が多く、新鮮さを感じた。

社交の場で必要になる「教養としての戦略論」というイメージ
 
posted by Takashi Inoue at 22:08| Comment(0) | 書籍

2016年01月01日

書籍: 模倣の経営学



早稲田大学 商学院教授による一冊
アジアの数か国で翻訳版が出版されている。

本書では、ビジネスにおいて異分野から
模倣することの重要性が説かれ、
またその具体的な手順が示される。

掲載されている各事例は、最終的に行きついた戦略だけでなく、
初期段階からの時系列的に変化を記載しているため分かりやすい。

まずは詳細まで徹底的に模倣することを勧めるところは
先日紹介した「星野リゾートの教科書」とも共通する。
反転の繰り返し、という大局観は非常に参考になった。

一方で、分析フレームワークとして提唱されている P-VAR は
個人的にはあまりシックリこなかった。


■トピックス

・模倣は定番手法
 創造性を重んじる芸術の世界でも、まずは模倣の練習から始まる。
 独自の作家とは、模倣しない人ではなく、模倣されない人である。

・模倣の重要性を説く人は多い
 ドトール創業者、ニトリ創業者ほか多くの経営者・
 「我流はダメだ。生きている時間が短いから」

・模倣対象を選ぶ
 距離の遠いところからモデルを見つけてくると有効性が高い。
 (事業内容、地理、時間的に遠いところから探す)
 異分野にある教師モデルと、同分野にある反面教師モデルを
 同時に見つけられると、向かうべき方向が決めやすい。
 
・模倣要素を選ぶ
 製品やサービスではなく、それを生み出す仕組みを模倣する。
 差別化要因がアウトプットでなく仕組みであれば、優位性が持続する。
 インターネットの普及によってアウトプットの模倣は速度が上がっている。
 模倣対象からは、複数の模倣要素を引き出せる。何を抽出するか重要。

・模倣の手順は守破離
 守: 模倣対象を忠実に再現する
 破: 個別要素を自分の環境に応じてカスタマイズ
 離: ポジティブなサイクルが回る仕組みづくり

・発展の流れを意識する
 既存プレーヤーの反転が出現する形で発展してゆく。
  ・A → Aの逆であるB → Bの逆であるA
  ・A → Aの逆であるB → AとBの逆であるC
 それを意識して大局観を持った戦略を策定する。
 
・ビジネスモデル分析の枠組みP-VAR
 ポジショニングスクールとリソースベースドビュー、
 オペレーション戦略を統合した分析の枠組みである。
 模倣対象をここに当てはめて分析した後、
 構成要素を反転させて自社の戦略を練る。

・情報収集の方法は多い
 講演会、視察ツアー、直接コンタクト、
 業務提携、定年退職者の雇い入れ
 多くの企業で実際に行われている。

・アドバイス
 もし新規事業を始めたいなら、
 それにピッタリ合うモデルを見つけて、
 うまく模倣することが大切。

・その他
 ネットワーク資産を持たなければ加盟店が独立してしまう。
 具体化・抽象化の幅と速度
 
posted by Takashi Inoue at 05:05| Comment(0) | 書籍